民法21-2:請負契約

目次

請負契約とは?

事例
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flowchart LR
 A_注文者
 B_請負人
 
 A_注文者 ------>|報酬| B_請負人
 B_請負人 ------>|仕事の完成 + 引渡し| A_注文者

AはBに対して「代金2,000万円で自分が所有する土地に建物を建ててほしい」との申込みし、Bは「その仕事を請け負います」と、これを承諾した。

請負契約とは、当事者の一方(請負人)が仕事を完成すること(建物の建築など)を約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって成立する契約のことをいいます(632条)。

請負契約においては、雇用契約と異なり、請負人は注文者から独立している点が特徴です。

また、請負契約の報酬は、仕事の目的物の引渡と同時に支払わなければならないとされており(633条本文)、請負契約では、目的物の引渡しと報酬の支払いの同時履行が原則となっています。12

下請負

下請負とは、請負人が請け負った仕事の全部または一部を、さらに第三者に請け負わせることをいいます。

この下請負は、請負人本人の能力に着目した特別な請負の場合を除き、原則として認められます。

下請負が行われた場合、下請負人は元請負人の履行補助者となるため、下請負人の故意や過失については元請負人が責任を負います。3

目的物の所有権の帰属

請負契約における目的物の所有権の帰属は、以下のように決まります。

  • 注文者が材料の全部または主要部分を提供した場合
    目的物の所有権は原始的に注文者に帰属する(大判昭7.5.9)

  • 請負人が材料の全部または主要部分を提供した場合
    • 原則:請負人が所有権を取得し、引渡しによって注文者に移転する(大判明37.6.22)
    • 例外:
      • 特約がある場合には、目的物の所有権は注文者に帰属する(大判大5.12.13)4
      • 注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、特約の存在が推認され、目的物の所有権は原始的に注文者に帰属する(最判昭44.9.12)

請負人の担保責任

売主の担保責任の規定(562条564条)は、請負契約にも適用されるため(559条)、請負人は売主と同様の担保責任を負うことになります。

請負契約の終了

仕事未完成の間の注文者の解除権

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償することで契約を解除することができます(641条)。5

この規定は、不要になった仕事を続けさせることで注文者の負担が過度に増えることを防ぐために設けられています。

注文者の破産手続開始決定による解除権

注文者が破産手続開始の決定を受けた場合、請負人または破産管財人は、契約を解除することができます(624条1項本文)。ただし、請負人は、仕事を完成した後は契約の解除をすることができません(624条1項但書)。

  1. 重要判例:注文者は、契約内容の不適合の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ、信義則に反すると認められるときを除き、請負人から契約内容不適合を理由とする損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払いを拒むことが出来る(最判平9.2.14) ↩︎
  2. 注文者は、契約内容不適合を理由とする損害賠償請求権と報酬請求権を相殺することもできる(最判昭53.9.21) ↩︎
  3. 下請禁止特約がなされている場合でも、下請負が当然に無効となるわけではないが、下請負をすること自体が債務不履行となるから、元請負人は下請負をしたことにより生じたすべての事由について損害賠償責任を負う(大判明45.3.16) ↩︎
  4. 重要判例:建物建築工事の注文者と元請負人との間に、請負契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合、者請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別な合意があるなど、特段の事情の無い限り、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する(最判平5.10.19) ↩︎
  5. 参考:工事内容が可分な工事請負契約において、仕事の完成前に請負契約を解除する場合、請負人がすでにした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分は仕事の完成とみなされるから(634条前段2号)、未施工部分について契約の一部解除をすることができるにすぎない。 ↩︎
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