民法19-2:売買契約とは?手付・担保責任・買戻しまで徹底解説

この記事はこんな人におすすめ
  • 売買契約の基本をやさしく理解したい人
  • 「手付」や「売主の担保責任」のポイントを押さえたい人
  • 行政書士試験の民法対策をしている人
  • 試験によく出る条文や判例もあわせて覚えたい人
目次

売買契約とは?

事例
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  theme: neutral
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flowchart LR
土地[/"土地"/]
A_売主 --目的物_土地--> B_買主
B_買主 --代金--> A_売主








AはBに対して「自分の所有する土地を売りたい」と申込みをしたところ、Bはこれを承諾した。

売買契約とは、売主が「」(財産権)を買主に渡し、買主がその代金を支払う契約のことです(555条)。
売買契約に関する費用1は、原則として売主・買主の双方が半分ずつ負担します(558条)。これは公平の観点から定められています。

手付(てつけ)とは?

手付とは、売買契約を結ぶときに、当事者の一方相手方渡す金銭などのことを指します。手付にはいくつかの種類があります。2

  • 解約手付:約定解除権の合意という権能を有する手付
  • 証約手付:契約成立の証拠としての手付
  • 違約手付:相手方の債務不履行に際して受領者により没収される手付3
    • 損害賠償額の予定としての手付:手付の没収だけですませ別途損害賠償を請求することができない
    • 違約罰としての手付:手付の没収以外に現実に被った損害の賠償請求が可能

解約手付による解除

売主が契約の履行に着手するまでなら、

  • 買主手付を放棄して解除でき、
  • 売主手付の倍額を返して解除できます。(557条1項)。

売主の担保責任とは?

売主の担保責任とは、「買ったものが契約通りでなかった場合に、売主が責任を負うこと」です。
たとえば、商品に欠陥があったり、数量が足りなかったりして、代金と目的物が釣り合っていないときがこれに当たります。
売買契約では、買主が不利益を被らないように売主の責任が重視されているのです。

【参考】売買契約以外で、売主の担保責任を負う契約

他人物売買の効力

売主が他人の物を売った場合でも、売買契約自体は有効に成立します(最判昭25.10.26)。
ただし、売主はあとでその権利を取得して買主に移転する義務を負うことになります。

売主の担保責任の要件

買主が売主の担保責任を追及することができるのは、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約内容不適合)(562条1項本文)。

契約内容不適合は、隠れたものである必要はありません(買主の善意無過失は要求されない)。

ただし、買主側に原因(帰責事由)がある場合は、売主の担保責任は問えません(562条2項563条3項)。

売主の担保責任の効果

買主は、売主に対し、目的物の補修、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます(562条1項本文)。4

また、次の通り、不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます。

  • 原則
    装脳と期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、代金減額請求ができる(563条1項)。
  • 例外:以下の場合、無催告で代金減額請求ができる(563条2項)。
    • 履行の追完が不能の場合
    • 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した場合
    • 特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達成できない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき
    • 買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかな場合

期間制限(担保責任を主張できる期間)

売主の担保責任を主張できる期間は次の通りです。

  • 目的物の種類・品質に関する不適合の場合
    買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知する必要がある(566条本文
    ※売主が目的物の引渡時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、通知は不要であり、消滅時効の一般原則に戻る(566条但書

  • 目的物の数量や権利移転義務の不適合の場合
    消滅時効の一般原則(166条1項
    ※買主が不適合を知った時から5年または目的物の引渡時から10年

売買契約の効力

契約当事者の義務

売主買主の義務は次の通りです。(555条)。5

  • 売主:目的物(財産権)を買主に移転する義務
  • 買主:売主に代金を支払う義務

また、目的物に関連する「果実(収益)」や代金の「利息」についてもルールがあります。

  1. 目的物の引渡前
    • 代金未払い:果実は売主に帰属する(575条1項
    • 代金支払い済み:果実は買主に帰属する(大判昭7.3.3)

  2. 目的物の引渡後
    果実は買主に帰属するが(575条1項反対解釈)、代金支払期限が到来している場合、引渡日から利息支払義務を負う(575条2項

代金支払拒絶権

次の場合、買主は代金の全部または一部の支払いを拒むことができます576条)。

  • 買い受けた権利の全部または一部を取得できず、または失うおそれがある場合(ただし、売主が相当の担保を供した場合は除く)
    ⇒買主は、危険の程度に応じて、代金の全部または一部の支払いを拒むことができる

  • 買い受けた不動産に契約内容に適合しない 先取特権質権抵当権の登記がある場合(577条1項前段・2項
    ⇒買主は、抵当権消滅請求等の担保物権を消滅させる手続きが終わるまで、その代金の支払いを拒むことができる

買戻し(民法579条)

買戻しとは、売買契約時の特約によって、
売主が代金と契約費用を返すことで売買契約を解除し、目的物を取り戻すことをいいます(579条前段)。

この買戻しは、借金をする際に「債務を弁済すれば買い戻すことができる」という特約を付けて、債務者が所有するものを債権者に譲渡する形で担保目的の利用されるケースが典型です。

まとめ

売買契約は民法の基本中の基本!
特に「手付」「担保責任」「買戻し」は行政書士試験でも頻出なので、しっかり整理して押さえておきましょう。

  1. 具体例:契約その作成費用など ↩︎
  2. 重要判例:売買の手付は、反対の証拠がない限り、557条所定のいわゆる解約手付と認定するべきである(最判昭29.1.21) ↩︎
  3. 重要判例:損害賠償額の予定としての手付と解約手付を兼ねることもできる(最判昭24.10.4) ↩︎
  4. 参考:買主は、債務不履行を理由とする損害賠償請求や契約の解除をすることもできる(564条)。 ↩︎
  5. 参考:売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払いについても同一の期限を付したものと推定される(573条↩︎
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