🧭この記事はこんな人におすすめ
- 行政事件訴訟の全体像をわかりやすく学びたい方
- 抗告訴訟の種類やそれぞれの特徴を整理したい方
- 行政書士試験で行政事件訴訟に関する問題に備えたい方
- 「主観訴訟」と「客観訴訟」の違いがピンと来ない方
目次
🎓行政事件訴訟とは?わかりやすく解説
行政事件訴訟とは、国や地方公共団体の違法な行政作用によって、国民の権利や利益が侵害されたときに、その是正を裁判所に求める制度のことです。
この手続きについて定めているのが「行政事件訴訟法」です1
🔍行政事件訴訟の4つの類型
行政事件訴訟法では、以下の4種類の訴訟類型が定められています(2条)。
このうち、①抗告訴訟と②当事者訴訟は「主観訴訟」と呼ばれます。これは、国民個人の権利や法律上の利益を守るために提起される訴訟で、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たり、裁判所による審査が当然に認められます。
一方、③民衆訴訟と④機関訴訟は「客観訴訟」と呼ばれ、個人の権利保護が目的ではなく、客観的な法秩序の維持が目的です。これらは、「法律上の争訟」に当たらず、当然に裁判所の審査権が及ぶわけではなく、法律に特別の定めがある場合に限り提起できます(42条)。
⚖抗告訴訟とは?【6つの種類を押さえよう】
抗告訴訟は、行政庁の「処分」や「裁決」などの公権力の行使に不服があるときに提起する訴訟で、行政事件訴訟の中心的な制度です(3条1項)。
行政事件訴訟法では、以下の6つの抗告訴訟を定めています。
訴訟の種類 | 内容 |
---|---|
処分取消訴訟 | 違法な行政処分を取り消す訴訟(3条2項) |
裁決取消訴訟 | 違法な裁決を取り消す訴訟(3条3項) |
無効等確認訴訟 | 処分や裁決の無効などを確認する訴訟(3条4項) |
不作為の違法確認訴訟 | 行政庁が義務ある処分をしないことが違法であると確認する訴訟(3条5項) |
義務付け訴訟 | 行政庁に処分や行為をするよう求める訴訟(3条6項) |
差止め訴訟 | 将来行われるおそれのある処分の差止めを求める訴訟(3条7項) |
なお、これら6つ以外にも、行政事件訴訟法は他の類型を排除していないため、無名抗告訴訟(条文に明記されていない抗告訴訟)が認められる可能性もあります。
■行政事件訴訟の全体像
--- config: theme: neutral --- flowchart LR subgraph 取消訴訟以外の抗告訴訟 無効等確認訴訟 不作為の違法確認訴訟 義務付け訴訟 義務付け訴訟 差止め訴訟 仮の義務付け/仮の差止め end subgraph 取消訴訟 処分取消訴訟 裁決取消訴訟 end 行政事件訴訟 --> 主観訴訟["主観訴訟<br>国民の個人的な<br>権利の保護"] 主観訴訟 --> 抗告訴訟 抗告訴訟 --> 法定抗告訴訟 法定抗告訴訟 --> 処分取消訴訟 法定抗告訴訟 --> 裁決取消訴訟 法定抗告訴訟 --> 無効等確認訴訟 法定抗告訴訟 --> 不作為の違法確認訴訟 法定抗告訴訟 --> 義務付け訴訟 法定抗告訴訟 --> 差止め訴訟 抗告訴訟 --> 無名抗告訴訟 主観訴訟 --> 当事者訴訟 当事者訴訟 --> 形式的当事者訴訟 当事者訴訟 --> 実質的当事者訴訟 行政事件訴訟 --> 客観訴訟["客観訴訟<br>客観的な法秩序<br>の適正"] 客観訴訟 --> 民衆訴訟 客観訴訟 --> 機関訴訟 click 処分取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/" style 処分取消訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/" style 裁決取消訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-1/" style 無効等確認訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-2/" style 不作為の違法確認訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-3/" style 義務付け訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-4/" style 差止め訴訟 color:#1176d4 click 仮の義務付け/仮の差止め "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-5/" style 仮の義務付け/仮の差止め color:#1176d4 click 当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-1/" style 当事者訴訟 color:#1176d4 click 形式的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-2/" style 形式的当事者訴訟 color:#1176d4 click 実質的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-3/" style 実質的当事者訴訟 color:#1176d4 click 民衆訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/" style 民衆訴訟 color:#1176d4 click 機関訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/" style 機関訴訟 color:#1176d4
💡補足:争点訴訟とは?
争点訴訟は、行政処分や裁決の存否や有効性などが「争点」となっている私法上の法律関係に関する訴訟です(45条)。2これは行政事件訴訟ではなく、あくまで民事訴訟3として扱われます。
📝まとめ|行政事件訴訟の基本を押さえよう
- 行政事件訴訟とは、行政による違法な処分などにより権利を侵害された国民が、その是正を裁判所に求めるための制度です。
- 行政事件訴訟には、以下の4つの類型があります。
- 主観訴訟は「法律上の争訟」に該当し、当然に裁判所の審査対象となります。
- 客観訴訟は個人の権利救済が目的ではないため、法律の定めがあるときのみ提起できます。
- 抗告訴訟は6種類あり、行政事件訴訟の中核をなす制度です(取消訴訟、無効等確認訴訟、義務付け訴訟など)。
- 争点訴訟は行政事件訴訟ではなく、行政処分を前提として争う民事訴訟です。
行政事件訴訟の基礎は、行政書士試験の行政法でよく問われる重要テーマです。各類型の違いや、訴訟ごとの特徴をしっかり整理しておきましょう!