この記事はこんな人におすすめ
- 無効等確認訴訟の意味や特徴がよくわからない
- 取消訴訟やその他の行政訴訟との違いを理解したい
- 行政書士試験に向けて、条文ベースで訴訟要件を整理したい
目次
無効等確認訴訟とは?わかりやすく解説
無効等確認訴訟とは、「行政庁が行った処分や裁決」の存否や効力の無効を裁判所に確認してもらう 訴訟のことです(3条4項)。
どうしてこのような訴訟が必要なの?
たとえ行政処分に重大な瑕疵(ミスや違法)があって本来なら無効だったとしても、行政庁がそれに気づかず、さらに別の処分を重ねてしまう可能性があります。
そうなると、個人の権利が不当に侵害されたままになってしまいますよね。
そこで、こうした不安定な状態を解消するために、「無効確認の訴訟」を起こすことができるのです。12
■行政事件訴訟法の類型
--- config: theme: neutral --- flowchart LR subgraph 取消訴訟以外の抗告訴訟 無効等確認訴訟 不作為の違法確認訴訟 義務付け訴訟 義務付け訴訟 差止め訴訟 仮の義務付け/仮の差止め end subgraph 取消訴訟 処分取消訴訟 裁決取消訴訟 end 行政事件訴訟 --> 主観訴訟["主観訴訟<br>国民の個人的な<br>権利の保護"] 主観訴訟 --> 抗告訴訟 抗告訴訟 --> 法定抗告訴訟 法定抗告訴訟 --> 処分取消訴訟 法定抗告訴訟 --> 裁決取消訴訟 法定抗告訴訟 --> 無効等確認訴訟 法定抗告訴訟 --> 不作為の違法確認訴訟 法定抗告訴訟 --> 義務付け訴訟 法定抗告訴訟 --> 差止め訴訟 抗告訴訟 --> 無名抗告訴訟 主観訴訟 --> 当事者訴訟 当事者訴訟 --> 形式的当事者訴訟 当事者訴訟 --> 実質的当事者訴訟 行政事件訴訟 --> 客観訴訟["客観訴訟<br>客観的な法秩序<br>の適正"] 客観訴訟 --> 民衆訴訟 客観訴訟 --> 機関訴訟 click 処分取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/" style 処分取消訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/" style 裁決取消訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-1/" style 無効等確認訴訟 color:#1176d4,fill:#ffb6c1 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-2/" style 不作為の違法確認訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-3/" style 義務付け訴訟 color:#1176d4 click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-4/" style 差止め訴訟 color:#1176d4 click 仮の義務付け/仮の差止め "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-5/" style 仮の義務付け/仮の差止め color:#1176d4 click 当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-1/" style 当事者訴訟 color:#1176d4 click 形式的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-2/" style 形式的当事者訴訟 color:#1176d4 click 実質的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-3/" style 実質的当事者訴訟 color:#1176d4 click 民衆訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/" style 民衆訴訟 color:#1176d4 click 機関訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/" style 機関訴訟 color:#1176d4
無効等確認訴訟の要件
原告になれる人(原告適格)
無効等確認訴訟を起こすには、次の2つの要件を満たす必要があります(36条)。
- その処分や裁決が無効であることを主張する“法律上の利益”を有すること
- その処分・裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え(当事者訴訟・民事訴訟)によって目的を達することができないもの
→つまり、「他の手段がないからこそ、無効等確認訴訟を起こす」必要があるわけですね。
その他の訴訟要件(取消訴訟の規定の準用)
以下の点も押さえておきましょう。
準用されない規定(=適用されない)
無効等確認訴訟では、次のような手続ルールは適用されません。
審査請求の前置が不要(8条は適用されない)
→ 取消訴訟のように「審査請求を経てからでないと提起できない」という縛りがありません。
出訴期間の制限がない(14条は準用されない)
→ いつでも訴えることができます。
無効等確認訴訟の判決
無効等確認訴訟の対象である処分・裁決に無効原因となる瑕疵がある場合、認容判決が下されることになり、無効原因となる瑕疵がない場合、棄却判決が下されます。
まとめ
無効等確認訴訟は、「取消訴訟と何が違うのか」が理解のカギになります。
以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。
- 無効を前提とする法律関係をクリアにしたいときに使う
- 原則、他の手段で解決できない場合にのみ認められる
- 出訴期間や審査請求前置が不要な点が取消訴訟と異なる
行政事件訴訟法では、細かな条文準用がよく出題されます。条文の違いに注目しながら学習すると得点力がアップしますよ!