行政法17-1:「無効等確認訴訟」とは?要件・判決のポイントをわかりやすく解説

この記事はこんな人におすすめ
  • 無効等確認訴訟の意味や特徴がよくわからない
  • 取消訴訟やその他の行政訴訟との違いを理解したい
  • 行政書士試験に向けて、条文ベースで訴訟要件を整理したい
目次

無効等確認訴訟とは?わかりやすく解説

無効等確認訴訟とは、「行政庁が行った処分や裁決」の存否効力の無効を裁判所に確認してもらう 訴訟のことです(3条4項)。

どうしてこのような訴訟が必要なの?

たとえ行政処分に重大な瑕疵(ミスや違法)があって本来なら無効だったとしても、行政庁がそれに気づかず、さらに別の処分を重ねてしまう可能性があります。

そうなると、個人の権利が不当に侵害されたままになってしまいますよね。
そこで、こうした不安定な状態を解消するために、「無効確認の訴訟」を起こすことができるのです。12

行政事件訴訟法の類型

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR

 subgraph 取消訴訟以外の抗告訴訟
  無効等確認訴訟
  不作為の違法確認訴訟
  義務付け訴訟
  義務付け訴訟
  差止め訴訟
  仮の義務付け/仮の差止め
 end

 subgraph 取消訴訟
  処分取消訴訟
  裁決取消訴訟
 end


行政事件訴訟 --> 主観訴訟["主観訴訟<br>国民の個人的な<br>権利の保護"]
 主観訴訟 --> 抗告訴訟
  抗告訴訟 --> 法定抗告訴訟
   法定抗告訴訟 --> 処分取消訴訟
   法定抗告訴訟 --> 裁決取消訴訟
   法定抗告訴訟 --> 無効等確認訴訟
   法定抗告訴訟 --> 不作為の違法確認訴訟
   法定抗告訴訟 --> 義務付け訴訟
   法定抗告訴訟 --> 差止め訴訟
  抗告訴訟 --> 無名抗告訴訟 
 主観訴訟 --> 当事者訴訟
  当事者訴訟 --> 形式的当事者訴訟
  当事者訴訟 --> 実質的当事者訴訟
行政事件訴訟 --> 客観訴訟["客観訴訟<br>客観的な法秩序<br>の適正"]
 客観訴訟 --> 民衆訴訟
 客観訴訟 --> 機関訴訟

click 処分取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/"
style 処分取消訴訟 color:#1176d4
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/"
style 裁決取消訴訟 color:#1176d4
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-1/"
style 無効等確認訴訟 color:#1176d4,fill:#ffb6c1
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-2/"
style 不作為の違法確認訴訟 color:#1176d4
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-3/"
style 義務付け訴訟 color:#1176d4
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-4/"
style 差止め訴訟 color:#1176d4
click 仮の義務付け/仮の差止め "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-5/"
style 仮の義務付け/仮の差止め color:#1176d4
click 当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-1/"
style 当事者訴訟 color:#1176d4
click 形式的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-2/"
style 形式的当事者訴訟 color:#1176d4
click 実質的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-3/"
style 実質的当事者訴訟 color:#1176d4
click 民衆訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/"
style 民衆訴訟 color:#1176d4
click 機関訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/"
style 機関訴訟 color:#1176d4

無効等確認訴訟の要件

原告になれる人(原告適格)

無効等確認訴訟を起こすには、次の2つの要件を満たす必要があります(36条)。

  1. その処分や裁決が無効であることを主張する“法律上の利益”を有すること
  2. その処分・裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え(当事者訴訟・民事訴訟)によって目的を達することができないもの

→つまり、「他の手段がないからこそ、無効等確認訴訟を起こす」必要があるわけですね。

その他の訴訟要件(取消訴訟の規定の準用)

以下の点も押さえておきましょう。

要件内容
処分性訴える対象が「行政処分」である必要があります
被告適格原則として「処分を行った行政庁」が被告になります(11条準用
裁判管轄取消訴訟と同じく、12条が準用されます

準用されない規定(=適用されない)

無効等確認訴訟では、次のような手続ルールは適用されません

審査請求の前置が不要(8条は適用されない)
→ 取消訴訟のように「審査請求を経てからでないと提起できない」という縛りがありません。

出訴期間の制限がない14条は準用されない)
→ いつでも訴えることができます。

無効等確認訴訟の判決

無効等確認訴訟の対象である処分・裁決に無効原因となる瑕疵がある場合、認容判決が下されることになり、無効原因となる瑕疵がない場合、棄却判決が下されます。

まとめ

無効等確認訴訟は、「取消訴訟と何が違うのか」が理解のカギになります。
以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。

  • 無効を前提とする法律関係をクリアにしたいときに使う
  • 原則、他の手段で解決できない場合にのみ認められる
  • 出訴期間や審査請求前置が不要な点が取消訴訟と異なる

行政事件訴訟法では、細かな条文準用がよく出題されます。条文の違いに注目しながら学習すると得点力がアップしますよ!

  1. 具体例:課税処分が無効であることから税金をはらわないでいたところ、行政庁がそれに気付かずに滞納処分をしてくるおそれがあることから、課税処分の無効等確認訴訟を提起する場合など ↩︎
  2. 参考:無効原因のある処分・裁決については、無効等確認訴訟を提起しなくても、その無効を主張できる ↩︎
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