商法2-2:商行為の特則とは?民法との違いや重要ポイントをわかりやすく解説

🎯この記事はこんな人におすすめ
  • 行政書士試験で「商法」が苦手な方
  • 民法との違いを整理したい方
  • 商行為に関する重要条文を効率よく覚えたい方
  • 商法の要点を押さえて得点源にしたい方
目次

商行為の特則とは?民法とどう違う?

商法では、取引の迅速性安全性を重視するため、民法とは異なる特則(特別なルール)が定められています。
民法が一般市民の取引を前提としているのに対し、商法は営利目的商人同士の取引に対応しているため、より合理的・効率的なルールが整備されています。

商行為における代理と委任のルール

代理の方法 – 顕名の省略が認められる(商法504条)

民法では、代理人は「本人のために行為している」ことを示す(顕名)が必要です(民法99条1項)。しかし、商取引ではスピードが重視されるため、代理人が顕名しなくても、原則としてその効果は本人に帰属します(504条本文)。

✅ただし、相手方が代理人の立場を知らなかった場合は、代理人に履行請求できます(504条但書)。1

👉参考:「代理」とは?基本から事例・重要判例まで完全解説!

商行為の委任 – 委任の範囲が広い(商法505条)

商法では、商行為の受任者は、委任の本旨に反しない限り、委任されていない行為も受任者が行うことができます。
これは、本人の利益を優先し、柔軟な対応を認めるための規定です(505条)。。

受任者は、委任の本旨に従い善管注意義務を負っているので(民法644条)、本人の利益のために幅広い活動を行うことができます。

代理権の消滅 – 本人死亡後も代理権は消滅しない(商法506条)

商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない506条)。

民法では、本人が亡くなると代理権は消滅します(民法111条1項1号)。
しかし商法では、取引の安定性を重視し、委任による代理権は本人の死亡後も引き継がれます(本人の相続人との間に代理関係が存続する)。

商人同士の契約成立ルール

隔地者間の契約の申込み – 申込みの失効が早い(商法508条)

商人間・隔地者の間の申込み・承諾期間が定められていない場合、相手が相当の期間内に承諾の通知しなければ、申込みは効力を失います508条1項)。
民法と違い、撤回民法525条)がなくても失効するのが特徴です。

これは、商法は、商取引の迅速性の見地から、申込みの効力を長く継続させて申込者の自由を拘束するべきではないとの考えから、申込は当然に失効するものとされていいます。

諾否の通知義務 – 沈黙=承諾となることがある(商法509条)

商人が平常取引をする者から、その営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならないとされています(509条1項)。さらに、商人がこの通知を発することを怠ったときは、その商人は、契約の申し込みを承諾したものとみなされます(509条2項)。

民法では、遅滞なく諾否の通知を発する義務はなく、承諾の意思表示がなければ契約は成立しません(民法522条1項)。しかし、商法では、平常取引をする者の間には継続的な取引関係があり、商取引の迅速性を図る必要があることから、承諾者の沈黙を承諾とみなして契約が成立するようにしています。

受領物保管義務 – 受け取った物の保管義務(商法510条)

商人はその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければなりません(510条本文)。
ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、または商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りではありません(510条但書)。

商取引では、契約の申し込みと同時に、見本や承諾を予期しての目的物の送付が行われることがあることから、物品の安全を確保するとともに商人に対する信用を保護するため、受領物保管義務が設けられています。

商人には報酬請求権がある(商法512条)

商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができます(512条)。

民法では原則として委任は無報酬(民法648条1項)。ですが、商人は営利目的で活動しているため、当然に報酬を請求できます。

商事債権の性質

金銭貸借でも法定利息を請求できる(商法513条)

商人同士の金銭消費貸借では、特約がなくても法定利息を請求できます(513条1項)。
民法は特約がない限り、消費貸借は無償(民法589条1項)ですが、商人は利息で利益を得ることが前提です。

債務の履行場所のルール(商法516条)

債務の履行場所が決まっていないときは、

  • 特定物の引渡し その行為の時にその物が存在した場所
  • その他の債務債権者の現在の営業所(営業所がない場合、その住所

という原則が適用されます(516条)。

商事債権の担保と保証の特則

多数債務者の連帯 – 商人間の債務は連帯が原則(商法511条)

商行為に基づく債務は、複数人で負担する場合、原則として連帯債務になります。
これは民法の「分割債務(民法427条)」と異なり、履行を確実にするための規定です。

連帯保証 – 商事保証も連帯が原則

商行為に関連する保証契約では、保証人も連帯して責任を負います(511条2項)。
商取引の信頼性を高めるため、保証人の責任が重くなっています。

民法では、保証人は、連帯保証とする旨の意思表示をしない限り、催告の抗弁権検索の抗弁権民法452条453条)、分別の利益(民法456条)があります。しかし、商法では、債務の履行を確実にするために、保証人の責任を強化し、連帯保証が原則とされています。

流質契約の自由

民法349条では弁済期前の流質契約2が禁止されていますが、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、弁済期前の流質契約も許されます(515条)。

商人間の留置権

商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、当事者の別段の意思表示があるときを除き、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物または有価証券を留置することができます(521条)。

商人間の取引は継続的であることが通常であるため、民法で要求される被担保債権と留置物との牽連性は不要です。

商法と民法の比較表

民法商法
代理の方式顕名必要(99条1項)顕名不要(504条)
本人の死亡と代理権消滅(111条1項1号)存続(506条)
多数当事者の債務分割債務(428条)連帯債務(511条1項)
保証債務通常の保障(446条)連帯保証(511条2項)
流質契約禁止(349条)許容(515条)
留置権目的物が債務者の所有物であることは不要
目的物と債権の牽連性は必要(295条1項)
目的物が債務者の所有物であることが必要(521条)
目的物と債権の牽連性は不要

📚まとめ|商法の特則は「迅速・確実な取引」のためにある!

商法は、民法と異なり、スピーディかつ安全な取引を目的としたルールが数多く設けられています。
行政書士試験では、条文の趣旨や民法との違いを意識しながら、条文番号もセットで覚えるのが得点アップのコツです。

  1. 重要判例:商法の規定によれば、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行を請求することができるとされているが(504条但書)、判例は、相手方保護のため、相手方は、その選択により、本人との法律関係または代理人との法律関係のいずれかを主張できるとしている(最大判昭43.4.24)。 ↩︎
  2. 流質契約:被担保債権が弁済されない場合に、質権者に質物の所有権の取得を認める契約。 ↩︎
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