行政法3-3:行政行為の「取消し」と「撤回」の違いをわかりやすく解説!混同しやすいポイントを整理

この記事はこんな人におすすめ
  • 行政行為の「取消し」と「撤回」の違いがよくわからない
  • 試験でひっかけ問題が出そうで不安
  • 過去問で間違えたので、しっかり理解しておきたい
目次

行政行為の「取消し」と「撤回」とは?

行政法では、一度行った行政行為について、あとからその効力を消す制度があります。それが「取消し」と「撤回」です。この2つは似ているようで明確な違いがあるため、試験でも頻出のポイントです。しっかりと区別して覚えましょう。

■ 「取消し」とは?

取消しとは、行政庁違法な行政行為(=瑕疵がある行為)を、行われた時点に遡って失わせることをいいます。つまり、初めからその行政行為がなかったことにするというイメージです。1

民法における「取消し」も、同じように効力が遡って失われます。

■ 「撤回」とは?

撤回とは、適法に成立した行政行為であっても、事情が変わったことにより将来に向かって効力を失わせることです。例えば、ある補助金制度が社会状況の変化により不要となった場合などが該当します。23

■ 法律の根拠は必要か?

基本的には、「取消し」も「撤回」も法律の根拠は不要とされています。
これは、どちらも瑕疵のない状態を回復させることを目的としていて、国民にとって不利益を是正する意味合いがあるからです。

ただし、注意すべき例外があります。
それが「受益的行政行為4」の取消し撤回です。

受益的行政行為とは、許可免除・補助金の支給など、相手方にメリットを与える行政行為です。
これらを取り消したり撤回したりすると、相手方に不利益が生じます。

そのため、「取消し」や「撤回」によって生じる不利益よりも、必要性・公益性が上回る場合にのみ認められるという制限がつきます。

🔍最重要判例:最判昭63.6.17(行政行為の撤回と法律の根拠)

取消し・撤回を行えるのは誰?

  • 取消し:その処分をした行政庁だけでなく、上級の行政庁も行えます(通説)。
  • 撤回原則として処分庁のみが行うことができます。

この違いも試験では狙われやすいので注意しましょう。

取消しと撤回まとめ

取消し撤回
原因成立当初から行政行為に瑕疵がある場合適法に成立した行政行為について、その後の事情の変化により、その行為を維持することが適当でなくなった場合
主体処分庁・その上級行政庁処分庁のみ
効果訴求的に無効将来的に無効
法律の根拠不要

まとめ✅ 試験対策のポイント

  • 取消し」は違法な行政行為に、「撤回」は適法な行政行為に対して使う
  • 効力が**遡る(取消し)**のか、**将来に向かう(撤回)**のかを区別
  • 受益的行政行為の取消し・撤回には慎重な判断が必要
  1. 具体例:懲戒処分を受けるべき理由がないにもかかわらずなされた懲戒処分を取り消す場合など  ↩︎
  2. 具体例:運転免許を受けた者が、道路交通法に違反する行為をしたことを理由に、この者の運転免許を取り消す場合。 ↩︎
  3. 参考:行政行為の撤回によって相手方に損失が生じた場合、行政庁は、その損失を補償しなければならない ↩︎
  4. 受益的行政行為:国民に利益を与える行政行為のこと。例えば、補助金の交付や営業許可など ↩︎
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