民法11-4:「質権」の設定と効力を深掘り!流質契約や転質の特徴を理解しよう

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質権とは?

事例
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actor A_債務者_質権設定者
actor B_債権者_質権者

A_債務者_質権設定者 ->> B_債権者_質権者:質権設定契約
A_債務者_質権設定者 ->> B_債権者_質権者:時計の引渡し
B_債権者_質権者 ->> A_債務者_質権設定者:貸金債権
B_債権者_質権者 --> A所有の時計:質権

Aは、Bからお金を借りる際に、貸金債権を担保するため、自分の所有する時計に質権を設定する契約をしたうえで、この時計をBに引き渡した。

質権とは、債権の担保として、債務者または第三者から受け取った物を占有し、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利です(342条)。

質権者は、債権が弁済されなかった場合、債務者などから受け取った物を競売(けいばい)にかけ、その代金から優先的に弁済を得ることができます。

質権には、目的物の種類によって、①動産質・②不動産質・③権利質1の3種類があります。

動産質不動産質権利質
対抗要件占有の継続2352条当期(177条設定者からの通知または第三債務者の承諾(364条467条
存続期間なし10年(360条なし
使用収益権原則無し(350条298条2項あり(360条なし
果実収取権収取して他の債権者に優先して債権の弁済に充当可(350条297条当然に収取可
356条
必要費償還請求権全額請求可(350条299条1項原則請求不可
357条
利息請求可能
346条
不可(358条359条可能
346条
優先弁済目的物の換価のほか、簡易な弁済充当が可能(354条目的物の換価のみ可能目的債権の換価のほか、直接取立て可能(366条1項

質権の設定

質権は、債権者に目的物を引き渡すことによって効力を生じます(344条)。

ただし、債権者は質権設定者に代わりに質物を占有させることができません(345条)。そのため、占有改定はここで言う「引渡し」には該当しません。

質権の効力

被担保債権の範囲

質権は、設定行為で別段の定めがない限り、以下のものを担保します(346条)。

  • 元本
  • 利息
  • 違約金
  • 質権の実行の費用
  • 質物の保存の費用
  • 債務の不履行または質物の隠れた瑕疵によって生じた損害賠償

留置的効力

質権者は、被担保債権の弁済を受けるまで、質物を留置することができます(347条本文)。

ただし、この留置的効力は、質権者よりも優先権を有する債権者に対しては対抗することができません(347条但書)。

優先弁済的効力

債権者は、競売によって目的物を換価し、優先的に弁済を受けることができます。さらに、目的物が生み出す果実からも優先弁済を受けることが可能です(350条297条)。

転質

転質とは、質権者が質物をさらに別の債権の担保として質入れすることを指します。

質権者は、質権の存続期間内であれば、自らの責任において質物を転質することが可能です(348条前段)。3

ただし、転質によって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、質権者が責任を負います(348条後段)。

流質契約

質権設定者は、設定行為または債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させることや、法律で定められた方法以外で質物を処分させることを約束するする「流質契約」をすることはできません(349条後段)。
ただし、債務の弁済期を過ぎた後の契約であれば、このような約定も認められます。

  1. 参考:質権は、債券などの財産権の上にこれを設定することができる(362条1項↩︎
  2. 参考:動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、対抗要件を欠くため、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる(353条↩︎
  3. 参考:質権者は原則として、質権設定者の承諾を得なければ、質物を担保に供することができないが、例外的に転質は、承諾を得なくても自己の責任で行うことが認められている。 ↩︎
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