不動産の物権変動①:177条の「第三者」
対抗要件とは?

Aは、自己の所有する土地をBに対して売却したが、所有権移転登記はしなかった。その後、Aは、この土地をCにも売却して、所有権移転登記をした。
この事例では、同じ土地が二重に売却されています。しかし、一物一権主義の原則により、同じ物に対して同じ内容の物権が複数成立することはありません。このため、土地の所有者はBかCのどちらになるのかが問題となります。
民法では、不動産に関する物権の取得・喪失・変更について、登記を行わなければ第三者に対抗することができないと規定しています(177条)。つまり、土地を購入したとしても、登記をしなければ、第三者に対して自分が土地の所有者であると主張できません。不動産の対抗要件として、登記が必要とされているのです1。
したがって、登記を備えていないBは、Cに対して土地を取得したことを主張(対抗)できません。その結果、Cがこの土地の所有者となります。
「第三者」とは?
- ①客観的要件
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対抗要件を備えなければ物権変動があったことを主張できない「第三者」とは、当事者若しくはその包括承継人以外の者であって、不動産に関する物権の得喪・変更の登記の欠缺2を主張する正当の利益を有する者(大連判明41.12.15)を指します。
- ②主観的要件
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「第三者」に当たるかどうかを判断する際、その者が善意であるか悪意であるかは関係ありません(最判昭32.9.19)。つまり、先ほどの事例で、たとえCがBとAの土地売買を知っていたとしても、Bが登記をしていなければ、Cに対して土地の所有権を主張することはできません。
ただし、信義に反し誠実な行為をしていない者、いわゆる「背信的悪意者」は、「第三者」に当たらず、対抗要件を備えていなくても物権変動があったことを主張(対抗)できるとされています。4
背信的悪意者に当たるとされるのは以下のとおり
- 詐欺または強迫によって登記申請を妨害した者(不動産登記法5条1項)
- 復讐目的で買い受けた者(最判昭36.4.27)
- 登記のない第一買主に高値で売りつけようとして買い受けた者(最判昭43.8.2)
- 第一譲渡の代理人であった者(最判昭43.11.15)
このように、第三者の範囲や例外について理解することは、不動産取引において非常に重要です。
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