民法7-4:不動産の物権変動で知っておくべき『第三者』の定義と背信的悪意者とは?

目次

不動産の物権変動①:177条の「第三者」

対抗要件とは?

事例

Aは、自己の所有する土地をBに対して売却したが、所有権移転登記はしなかった。その後、Aは、この土地をCにも売却して、所有権移転登記をした。

この事例では、同じ土地が二重に売却されています。しかし、一物一権主義の原則により、同じ物に対して同じ内容の物権が複数成立することはありません。このため、土地の所有者はBかCのどちらになるのかが問題となります。

民法では、不動産に関する物権の取得・喪失・変更について、登記を行わなければ第三者に対抗することができないと規定しています(177条)。つまり、土地を購入したとしても、登記をしなければ、第三者に対して自分が土地の所有者であると主張できません。不動産の対抗要件として、登記が必要とされているのです1

したがって、登記を備えていないBは、Cに対して土地を取得したことを主張(対抗)できません。その結果、Cがこの土地の所有者となります。

「第三者」とは?

①客観的要件

対抗要件を備えなければ物権変動があったことを主張できない「第三者」とは、当事者若しくはその包括承継人以外の者であって、不動産に関する物権の得喪・変更の登記の欠缺2を主張する正当の利益を有する者(大連判明41.12.15)を指します。

  1. 第三者に当たる者
    1. 二重譲渡の譲受人
    2. 対抗要件を具備した賃借人(最判昭49.3.19)
    3. 差押債権者(最判昭39.3.6)

  2. 当たらない者
    1. 不法占有者(最判昭25.12.19)
    2. 無権利者(最判昭34.2.12)
    3. 転々譲渡の後主・前主の関係にある者(最判昭39.2.13)
    4. 譲渡人の相続人3
②主観的要件

「第三者」に当たるかどうかを判断する際、その者が善意であるか悪意であるかは関係ありません(最判昭32.9.19)。つまり、先ほどの事例で、たとえCがBとAの土地売買を知っていたとしても、Bが登記をしていなければ、Cに対して土地の所有権を主張することはできません。

ただし、信義に反し誠実な行為をしていない者、いわゆる「背信的悪意者」は、「第三者」に当たらず、対抗要件を備えていなくても物権変動があったことを主張(対抗)できるとされています。4

背信的悪意者に当たるとされるのは以下のとおり

  1. 詐欺または強迫によって登記申請を妨害した者(不動産登記法5条1項)
  2. 復讐目的で買い受けた者(最判昭36.4.27)
  3. 登記のない第一買主に高値で売りつけようとして買い受けた者(最判昭43.8.2)
  4. 第一譲渡の代理人であった者(最判昭43.11.15)

このように、第三者の範囲や例外について理解することは、不動産取引において非常に重要です。

物権変動インデックス

あわせて読みたい

  1. 重要判例:大判大5.4.1 A→B→Cと不動産が譲渡されたものの未だ登記がAの元にある場合、BはAに対して移転登記請求をすることができる ↩︎
  2. 登記の欠缺:登記がない事 ↩︎
  3. 重要判例:最判昭33.10.14 生前の被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人は、二重譲渡の譲受人と同様に「第三者」に当たる ↩︎
  4. 重要判例:最判平8.10.29 背信的悪意者からの転得者は、譲受人に対する関係で転得者自身が配信的悪意者と評価されるのでない限り、「第三者」に当たる ↩︎
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次