- 「裁決って結局なに?」と用語の意味があいまいな方
- 却下裁決・棄却裁決・認容裁決の違いが覚えにくいと感じている方
- 行政事件における裁決の効果や効力について整理したい方
- 行政書士試験の行政救済法を効率よく学びたい方
裁決とは?
「裁決(さいけつ)」とは、審査請求に対して審査庁が最終的に下す判断のことをいいます。
つまり、審査庁が「この請求に対してどう判断するか」を公式に示すものです。
裁決の3つの種類とその違い
行政不服審査制度において、裁決には却下裁決・棄却裁決・認容裁決の3つがあります。
① 却下裁決(きゃっかさいけつ)
審査請求が法律上の要件を満たしていない場合(例:期限を過ぎている、形式不備など)、審査の内容に入ることなく「門前払い」されます。
これを却下裁決といいます。
- ✅ 要件不備による審理拒否
- ✅ 処分の適否には触れない
② 棄却裁決(ききゃくさいけつ)
審査請求に形式的な問題はないが、請求の内容に理由がないときは棄却裁決になります。
たとえば、処分・不作為が適法・妥当であると審査庁が判断した場合です。
- ✅ 請求内容には理由がない
- ✅ 処分は適法・妥当と判断
💡特例:事情裁決とは?
処分が違法・不当であるにもかかわらず、その取消しによって著しい公益の障害が生じる場合、審査庁は例外的に請求を棄却することができます(45条3項)。
これを事情裁決といいます。
③ 認容裁決(にんようさいけつ)
審査請求に理由があり、処分または不作為が違法・不当だと認められた場合、審査請求が認められます。これが認容裁決です。
■【重要】認容裁決の効果1
処分 | 事実上の行為 | ||
審査庁が上級行政庁 | 処分の全部または一部を取消しまたは変更(46条1項本文)※ | 事実上の行為が違法または不当である旨を宣言 | 処分庁に対し当該事実上の行為の全部または一部を撤廃し、またはこれを変更すべき旨を命ずる(47条本文1号)※ |
審査庁が処分庁 | 当該事実上の行為の全部または一部を撤廃し、またはこれを変更する(47条本文2号)※ | ||
審査庁が上級行政庁・処分庁のどちらでもない | 処分の全部または一部を取り消す(46条1項ただし書) | 処分庁に対し当該事実上の行為の全部または一部を撤廃すべき旨を命ずる(47条但書) |
※審査請求人に不利益となるような変更はできません(48条)
■不作為に関する認容裁決の効果
審査庁が上級行政庁 | 不作為が違法または不当である旨を宣言 (49条3項前段) | 不作為庁に対し、申請に対して処分をすべき旨を命ずる (49条3項後段) |
---|---|---|
審査庁が不作為庁 | 申請に対して処分をする (49条3項後段2号) |
裁決の方式(どのように行われる?)
裁決は、審査庁の記名押印がある裁決書によって行われます。
この裁決書には理由が必ず記載される必要があります(50条1項4号)。
これは、査庁の判断を慎重にさせるとともに、審査請求人がさらに裁判などで争う際に参考とできるようにするためです。
裁決の効力(いつ・どんな力があるの?)
裁決の効力には、以下のようなものがあります。
効力の種類 | 内容 |
---|---|
公定力 | 裁決が有効であると推定される力 |
不可争力 | 一定期間が過ぎると争うことができなくなる力 |
執行力 | 実際に裁決に基づく措置を取れる力 |
不可変更力 | 裁決後に審査庁が勝手に変更できない力 |
裁決の拘束力(52条1項) | 関係行政庁は裁決の内容を尊重し、その趣旨に従って行動しなければならない |
※審査庁が不利益処分を取り消す裁決をした場合、その時点で取消しの効果は発生するので、処分庁は、改めて当該不利益処分を取り消す必要はありません。
重要判例2
裁決の効力が発生する時期
裁決の効力は、審査請求人(当該審査請求が処分の相手方以外の者のしたものである場合における認容裁決にあっては、審査請求人および処分の相手方)に送達されたときに発生します(52条1項)。
また、裁決書の謄本3を送付することにより送達とされます(52条2項本文)。
まとめ:裁決のポイントはここ!
- 裁決には「却下」「棄却」「認容」の3種類がある
- 認容裁決が出ると、処分や不作為に具体的な効果が生じる
- 裁決書には理由の記載が必要で、送達により効力が発生
- 裁決には公定力や拘束力など、行政行為としての法的効力がある