行政法3-8:「行政契約」の意味とは?準備・侵害・給付行政での違いも簡単解説

目次

行政契約とは?

行政契約とは、行政主体(国や地方公共団体)が行政目的を達成するために、国民(私人)と対等な立場で締結する契約のことです。1

民間同士の契約と異なり、行政による特別な目的を持つ契約という点が特徴です。

分野ごとの行政契約の活用状況

行政契約は、行政の分野ごとに活用のされ方が異なります。

準備行政での行政契約

準備行政とは、行政を遂行するのに必要な物品を購入したり、整備するなどの準備的な活動を行う分野です。
この分野では、次のような行政契約が積極的に活用されています。

  • 事務用品の購入契約
  • 庁舎建設の請負契約

このように、行政の事務を行うために必要な物品や施設を整える契約が多く見られます。

侵害行政での行政契約

侵害行政とは、行政が私人に義務を課したり権利を制限するような行為を行う分野です。
かつてはこの分野での契約はほとんど認められておらず、行政行為(一方的な処分)が原則でした。

しかし現在では、以下のような形で行政契約も一部認められています。

  • 公害防止協定2
  • 開発負担金や教育負担金などを私人が負担する契約

このように、行政と私人の合意に基づく契約方式も徐々に取り入れられています。

給付行政での行政契約

給付行政は、行政が国民に対して利益を与える分野です。
この分野では、契約方式を採用する法律が増えてきており、以下のような契約が行われます。

  • 公的資金の助成に関する契約
  • 指定管理者制度における契約

つまり、行政サービスの提供に関しても契約という形式が重視されつつあるのです。34

行政契約に関するルールや原則

法律の根拠は必要?

行政契約は、当事者の合意に基づいて成立するため、法律の根拠は必要ではありません
その契約内容が国民に義務を課したり、権利を制限するものである場合でも、同様です。

行政法の一般原則が適用される

行政契約はたとえ売買契約請負契約の形を取っていても、行政の活動の一環です。
そのため、以下のような行政法の一般原則が適用されます。

この点は、民間同士の契約と異なる大きな特徴です。

民法の規定も基本的に適用される

行政契約も契約の一種であるため、民法に定められた契約に関する一般規定が原則として適用されます。

ただし、行政特有の規制や原則が加わる点に注意しましょう。5

まとめ

行政契約は、民間契約と似た形でありながらも、行政という公的な目的のために行われる契約であり、行政法上の制限や原則が加わる特別な契約形態です。
行政書士試験でも、行政契約の位置づけや分野ごとの活用状況、適用される法原則などが問われるため、民法との違いを意識しながら理解しておくことが重要です。

  1. 具体例:市役所が備品として使う文房具の購入など ↩︎
  2. 購買防止協定:公害の発生原因となりうる事業を営む事業者と地方公共団体との間で、地域の生活環境悪化を防止するためにかわされる取り決め ↩︎
  3. 具体例:水道法では、水道の供給は、水道事業者(市町村)と給水を受ける者の間で締結される契約によるものとされている ↩︎
  4. 重要判例:水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる(最判平11.1.21) ↩︎
  5. 重要判例:地方公共団体の長が当該地方公共団体を代表して行う契約の締結については、双方代理の禁止を規定した民法108条1項が類推適用される(最判平16.7.13) ↩︎
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