民法10-3:「地役権」とは?土地の便益を得るための権利とその条件を詳解

この記事はこんな人におすすめ
  • 「地役権」という言葉の意味がよくわからない
  • 民法の試験対策で、地役権の性質や要件を整理したい
  • 土地の権利関係について具体的にイメージしたい
  • 行政書士・司法書士など法律系資格を目指している
目次

地役権とは? ─ 他人の土地を使える特別な権利

地役権(ちえきけん)とは、自分の土地(要役地)を便利に使うために、他人の土地(承役地)を利用できる権利のことです(280条本文)。

たとえば、自分の土地から道路に出るために、隣の土地を通行できるようにする権利などが地役権にあたります。

  • 地役権を設定された他人の土地 → 承役地(しょうえきち)
  • 地役権によって利益を受ける自分の土地 → 要役地(ようえきち)

地役権の2つの性質|付従性と不可分性

①付従性

地役権は、「土地とセット」で移転する性質を持ちます。つまり、要役地の所有権に付随して、所有権とともに、地役権も一緒に引き継がれるのが原則です(281条1項本文)。この性質を付従性といいます。

また、地役権だけを切り離して譲ったり、他の目的に使ったりすることはできません(281条2項)。
このように、地役権は要役地に付随して動く権利という特徴があります。

ポイント
地役権は「土地の一部のようなもの」と考えるとイメージしやすいです。

②不可分性

地役権は、土地全体にかかる権利として扱われます。
たとえば、要役地承役地が複数の人で共有されている場合でも、地役権はその土地全体に対して認められるのが原則です。この性質を不可分性といいます。

この性質により、共有者の一人が勝手に権利を分けたり、他の共有者の権利を無視したりすることはできません。1

ポイント
地役権は「土地の一部の人のもの」ではなく、「土地全体のためのもの」として扱われます。

時効による地役権の取得・消滅について

取得時効

地役権は、以下の条件を満たせば時効によって取得することができます。

  • 継続的に行使されていること(例:通行などが長期間続いている)
  • 外から見てわかる形で行使されていること(=外形的に明らか)

これらを満たして期間が経過すると、時効によって取得することができます(283条)。

消滅時効

要役地が複数の共有されている場合、一人の共有者について時効の完成猶予や更新が認められると、その効力は他の共有者にも及びます(292条)。

地上権永小作権地役権
存続期間当事者間で永久と定めることも可能
(大判明36.11.16)
20~50年の範囲で定めることができる(278条1項前段)当事者間で永久と定めることも可能
地代・小作料要素でない
(266条)
要素である
(270条)
要素でない
(280条)
物権的請求権返還請求
妨害排除請求
妨害予防請求
返還請求
妨害排除請求
妨害予防請求
返還請求×
妨害排除請求
妨害予防請求
抵当権の設定
369条2項

369条2項
×

まとめ|地役権は土地と一体となる権利

地役権は、「他人の土地を自分の土地のために使う」という特別な権利ですが、その本質は土地と土地の関係を調整するためのルールです。

付従性や不可分性、そして時効による取得・消滅などの要素は、すべて「土地全体の調和」を図るために設けられています。

行政書士試験などでもよく出題されるテーマなので、しっかり整理しておきましょう。

  1. 具体例:共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない(284条2項↩︎
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