民法15-2:多数当事者の債権・債務②連帯債権・債務

目次

連帯債権

連帯債権とは?

事例1
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flowchart TD
 A("A<br>債権者")
 B("B<br>債権者")
 C("C<br>債権者")
 D("D<br>債務者")

 A--300万円-->D
 B--300万円-->D
 C--300万円-->D

A・B・Cは3人で共同してDに対して300万円を貸し付け、その際に3人の債権は連帯債権とする特約がなされた。

連帯債権とは、複数の債権者が同一内容の給付について、それぞれ独立して全部の給付を請求できる債権のことをいいます。そして、そのうちの1人が給付を受けた場合、他の債権者の債権もすべて消滅します。

たとえば、事例1では、A・B・C3人は、それぞれ100万円ずつの債権を持っているわけではなく、それぞれが300万円全額の債権を有しています。そして、Dが3人のうち1人に300万円を支払えば、他の2人の債権も消滅します。

連帯債権の性質

複数の債権者が連帯債権を有している場合、各債権者は全員のために、全部または一部の履行を請求することができます。また、債務者はすべての債権者のために、各債権者に対して履行を行うことができます(432条)。

連帯債権者の1人に生じた事由

連帯債権者の1人について生じた事由は、原則として他の連帯債権者には影響を及ぼしません(435条の2:相対的効力の原則)。

しかし、以下の場合には、例外的に他の連帯債権者にも効力が及びます(絶対的効力)。

連帯債務

連帯債務とは?

事例2
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flowchart TD
 A("A<br>債務者<br>負担部分100万円")
 B("B<br>債務者<br>負担部分100万円")
 C("C<br>債務者<br>負担部分100万円")
 D("D<br>債権者")

 D--300万円-->A
 D--300万円-->B
 D--300万円-->C

A・B・Cは3人で共同してDから300万円を借り入れ、その際に3人の債務は連帯さむ(負担部分は平等)とする特約がなされた。

連帯債務とは、複数の債務者が同一の内容の給付について、それぞれ独立して全額の履行義務を負い、そのうちの1人が全額を支払えば、他の債務者の債務もすべて消滅する債務関係をいいます。

たとえば、事例2では、A・B・C3人は、それぞれ100万円ずつ債務を負っているのではなく、それぞれが300万円全額の債務を負っています。そして、誰か1人が300万円を支払えば、他の2人の債務も消滅します。1

また、「負担部分」とは、各債務者が最終的に負担する額のことを指します。
事例2では、負担部分は平等とされているため、それぞれ100万円ずつとなります。そのため、Aが300万円全額を支払った場合でも、Aは最終的に100万円を負担すればよいことになります。そのため、B・Cに対して100万円ずつ支払いを請求できます。

このように、他人の債務を弁済した人が、その弁済によって減少した財産の返還を請求できる権利を「求償権」といいます。

連帯債務の性質

複数の債務者が連帯債務を負っている場合、債権者は連帯債務者の1人に対して、または同時もしくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求できます(436条)。

また、連帯債務者の1人について法律行為無効取消しの原因があった場合でも、他の連帯債務者の債務は有効とされます(437条)。これは、連帯債務は各債務者が独立して負担するものであり、それぞれの債務の成立原因も個別に扱うのが当事者の意思に適しているためです。

連帯債務者の1人に生じた事由

連帯債務者の1人について生じた事由は、原則として他の連帯債務者には影響を及ぼしません(441条相対的効力の原則)。2ただし、以下の場合には例外的に、他の債務者にも効力が及びます(絶対的効力)。

連帯債務の絶対的効力3

  1. 債務の全部について効力を生じる
    1. 弁済・代物弁済4
    2. 更改(438条
    3. 自己の債権による相殺439条1項
    4. 混同440条

  2. 負担部分のみ効力を生じる
    他の債務者の反対債権による履行拒絶(439条2項

求償権

連帯債務者の1人が弁済を行った場合、その弁済額が自己の負担部分を超えているかどうかに関係なく、他の連帯債務者に対して、各自の負担部分に応じた求償権を有します(442条1項)。

ただし、連帯債務者の中に支払い能力がない者がいる場合、その支払いができない部分については、求償者および他の資力のある者の間で、それぞれの負担部分に応じて分割して負担します(444条1項)。

これは、弁済した者だけに支払い能力のない者の負担部分を押し付けるのは不公平であるためです。

通知を怠った連帯債務者の求償の制限

連帯債務者の1人が弁済する際、他の連帯債務者に通知しなかった場合、他の連帯債務者は債権者に対抗できる事由を有していたとき、その事由をもって弁済した連帯債務者に対抗できます(443条1項前段)。これは、連帯債務者の1人が通知を怠った場合、他の連帯債務者の債権者に対する対抗手段を保護する必要があるためです。

また、連帯債務者の1人が弁済を行った後、そのことを他の連帯債務者に通知しなかったため、他の連帯債務者がその事実を知らずに(善意)弁済をした場合、最初に弁済を行った者は、自己の弁済が有効であったものとみなすことができます(443条2項)。

これは、連帯債務者の1人が事後の通知を怠った場合、他の連帯債務者が二重に弁済させられることを防止する必要があるためです。

  1. 重要判例:連帯債務者の1人に対する債権のみを譲渡することもできる(大判昭13.12.22) ↩︎
  2. 具体例:債務の承認、債権譲渡の通知、時効の利益の放棄など ↩︎
  3. 参考:履行の請求、債務の免除、消滅時効の完成は、絶対的効力が生じない ↩︎
  4. 参考:弁済・代物弁済は、明文の規定はないが、債務を消滅させるという性質上、債務の全部について他の連帯債務者に対してもその効力を生じる ↩︎
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