行政法3-1:行政行為とは?

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行政行為とは?

行政行為とは、行政庁が法律に基づいて一方的に働きかけることにより、特定の国民の権利義務を変動させる行為のことをいいます。これは「処分」とよばれることもあります。

行政行為には、次のような特徴があります。

  • 法律効果が一般的・抽象的な行政立法と異なり、法的効果が特定個人の権利義務に及ぶこと
  • 事実行為である行政指導と異なり、特定個人の権利義務を具体的に決定すること
  • 相手方の同意を要する行政契約と異なり、行政庁の一方的判断によること

これらが行政行為の特徴です。

行政行為は、国民の権利義務に影響を与えるため、「法律による行政の原理法律の留保の原則」により、法律の根拠が必要とされます。

行政行為の種類

行政行為は、その効果の発生の仕方に応じて、「法律行為的行政行為」と「準法律行為的行政行為」に分類されます。

法律行為的行政行為

法律行為的行政行為とは、行政庁意思表示1のとおりの法的効果が発生する行政行為をいいます。この法律行為的行政行為は、さらに「命令的行為」と「形成的行為」に分類されます。

命令的行為とは、国民が生まれながらに本来有している活動の自由を制限し、一定の義務を課したり、その義務を解除したりする行為で、下命禁止許可免除の4種類があります。

命令的行為

意味具体例
下命国民に対して一定の行為をする義務を課す行為課税処分、違法建築物の除去命令
禁止国民に対して一定行為をしてはならない義務を課す行為道路の通行禁止、営業の停止命令
許可すでに法令又は行政行為によって課されている一般的な禁止を特定の場合に解除する行為2風俗営業の許可、飲食店の営業許可、火薬類輸入の許可、自動車の運転免許、医師の免許
免除既に法令又は行政行為によって課されている作為義務3を、特定の場合に解除する行為児童の就学義務の免除、納税義務の免除

形成的行為とは、国民が本来有していない特殊な権利や法律上の地位を行政庁が与えたり奪ったりする行為で、特許認可代理の3種類があります。

形成的行為

意味具体例
特許人が生まれながらにもっていない新たな権利や法律上の地位を特定の人に付与する行為4外国人の帰化の許可、河川や道路の占有許可、電気事業の許可、鉱業権設定の許可、公益法人設立の許可、公有水面の埋立免許
認可私人の法律行為を補充して、その法律上の効果を完成させる行為土地改良区設立の認可、公共料金値上げの認可、ガス供給約款の認可、銀行の合併の認可、農地の権利移転の認可、河川占有権の譲渡の承認
代理第三者のなすべき行為を行政主体が代わって行い、その第三者が自ら行ったのと同じ効果を生じさせる行為土地の収用裁決

準法律行為的行政行為

準法律行為的行政行為とは、行政庁が意思表示を行うのではなく、単に判断したことや認識したことを表示することで、法律の規定によって一定の効果が発生する行政行為をいいます。

準法律行為的行政行為には、確認公証通知受理の4種類があります。

命令的行為

意味具体例
確認特定の事業や法律関係の存否について判断する行為のうち、法律関係を確定する効果が認められるもの当選人の決定、所得税額の決定、建築確認、審査請求の採決、発明の特許
公証特定の事実や法律関係の存在を公に証明する行為のうち、法律の規定により一定の効果が発生することとされているもの選挙人名簿への登録、戸籍への記載
通知相手方に対して一定の事項を知らせる行為のうち、法律の規定により一定の効果が発生することとされているもの納税の督促
受理相手方の行為を有効なものとして受け付ける行為のうち、法律の規定により一定の効果が発生することとされているもの各種申請・不服申立ての受理

行政行為の種類まとめ

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR
  行政行為(行政行為)-->法律行為的行政行為(法律行為的<br>行政行為)
 法律行為的行政行為-->命令的行為(命令的行為)
 命令的行為-->下命(下命)
 命令的行為-->禁止(禁止)
 命令的行為-->許可(許可)
 命令的行為-->免除(免除)
 法律行為的行政行為(法律行為的<br>行政行為)-->形成的行為(形成的行為)
 形成的行為-->特許(特許)
 形成的行為-->認可(認可)
 形成的行為-->代理(代理)
 行政行為(行政行為)-->準法律行為的行政行為(準法律行為的<br>行政行為)
 準法律行為的行政行為-->確認(確認)
 準法律行為的行政行為-->公証(公証)
 準法律行為的行政行為-->通知(通知)
 準法律行為的行政行為-->受理(受理)

行政行為の効力

行政行為は、行政庁が国民に対して一方的に働きかけることが法律で認められている特殊な行為であり、私人間の行為とは異なり、以下のような効力が認められています。5

  1. 公定力
    行政行為が違法であっても直ちには無効とならず、それが取り消されない限り有効なものとして扱われる効力

  2. 不可争力
    一定期間を経過すると、私人の側から行政行為の効力を争うことができなくなる効力

  3. 執行力
    行政庁は行政行為の内容を自力で実現することができるという効力

  4. 不可変更力
    行政庁は一度行った行政行為を自ら変更することができないという効力
  1. 用語:一定の効果の発生を望んでいることを外部に表示する行為 ↩︎
  2. 許可を受けないで行われた法律効果も有効である ↩︎
  3. 用語:一定の行為をする義務のこと ↩︎
  4. 参考:許可の場合は、本来自由であるはずの行為が法令により規制されているので、行政庁の裁量の幅は狭い。これに対し、特許の場合は、私人の本来的自由に関わるものではないので、行政庁の裁量の幅は広い。 ↩︎
  5. 重要判例:行政行為の効力は、法令が特段の定めをしている場合を除き、相手方が現実にこれを了知し、または相手方の了知すべき状態に置かれたときに発生する(最判昭29.8.24) ↩︎
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