行政法3-2:行政行為の瑕疵とは?

目次

行政行為の瑕疵

行政行為の瑕疵とは?

行政行為の瑕疵とは、行政行為が法律に違反している場合(違法)や、行政行為が公益に反して不適切である場合(不当)を指します。

行政行為に瑕疵がある場合、その内容によっては、行政行為を当然に無効とみなすべきものと、取り消されるまでは有効として取り扱っても差し支えない程度のものがあります。最高裁判所の判例は、行政行為の瑕疵が重大かつ明白であるときに限り、その行政行為は当然に無効であると判断されています(最大判昭31.7.18)12

無効な行政行為には公定力不可争力が認められません。そのため、相手方はこれに従う必要がなく、また、いつまででも効力を争うことができる。

---
config:
  theme: neutral
---
flowchart LR
 行政行為-->瑕疵あり("瑕疵あり<br>(違法・不当)")
  瑕疵あり-->重大かつ明白な瑕疵(重大かつ明白な瑕疵<br>⇒当然に無効)
 瑕疵あり-->重大かつ明白とはいえない瑕疵(重大かつ明白とはいえない瑕疵<br>⇒取り消されるまで有効)
 行政行為-->瑕疵なし("瑕疵なし<br>(適法・妥当)")
 

違法性の承継

違法性の承継とは、ある行政行為(先行行為)に瑕疵があることが、その行為を前提として行われる別の行政行為(後行行為)の違法事由となることをいいます。

行政行為によって形成される法律関係は、できるだけ早期に確定し、安定を保つことが望ましいため、行政行為の瑕疵は原則としてそれぞれ個別に判断され、違法性の承継は原則として認められません。

しかし、先行行為と後行行為が連続した一体の手続きであり、特定の法律効果の発生を目的としているような場合には、例外的に違法性の承継が認められることがあります。3

瑕疵の治癒・違法行為の転換

瑕疵の治癒とは、当初は瑕疵があった行政行為であっても、その後の事情の変化などにより、事後的にその瑕疵が解消されることをいいます。4

一方、違法行為の転換とは、瑕疵ある行政行為を、そのままでは違法であるものの、別の行政行為として見直すことで適法な行政行為と扱うことができる場合に、いったん行われた行政行為を維持することを指します。

  1. 重要判例:瑕疵が明白であるかどうかは、当該処分の外形上、客観的に五人が一見看取し得るものであるかどうかにより決すべきである(最判昭36.3.7) ↩︎
  2. 重要判例:最高裁判所の判例は、瑕疵の明白性を必ず要求しているわけではなく、課税処分のように第三者の保護を考慮する必要のない処分は、明白な瑕疵を有していなくても、当然に無効となるとしている(最判昭48.4.26) ↩︎
  3. さ重要判例:農地買収計画に瑕疵があった場合、その後の農地買収処分に瑕疵がなかったとしても、違法性の承継が認められ、農地買収処分の違法性を争うことができる(最判昭25.9.15) ↩︎
  4. 重要判例:税務署長の更正処分における付記理由不備の瑕疵が、後日これに対する審査請求の裁決において明らかにされた場合でも、瑕疵の治癒は認められない(最判昭47.12.5) ↩︎
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次