民法17-3:債権の消滅 – 相殺

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相殺とは?

事例
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flowchart LR
 A("A<br>相殺の意思表示")
 B("B<br>       ")
 A--"自働債権 100万円"-->B
 B--"受働債権 100万円"-->A

AはBに対し、100万円の貸金債権を有しており、BもAに対し、100万円の貸金債権有していたところ、Aは両方の債権を相殺する意思表示をした。

相殺とは、債権者と債務者が互いに同じ種類の債務を負っている場合に、一方が意思表示をすることで、双方の債務を対等額だけ消滅させることをいいます。

相殺する側(A)⇒自働債権
相殺される側(B)⇒受働債権

相殺の要件

相殺適状とは?

相殺を行うには、「相殺適状」と呼ばれる状態が必要です。その要件は以下の通りです。

時効と相殺

時効によって消滅した債権であっても、その時効が完成する前に相殺適状にあった場合には、債権者は相殺を行うことができます(508条)。これは、すでに生じている相殺の期待を保護するためです。

相殺の禁止事由

①当事者間で相殺を禁止・制限する合意がある場合

当事者が相殺を禁止・制限する意思表示をした場合、悪意または重過失の第三者にはその合意を対抗することができます(505条2項)。

②自働債権とする相殺が禁止される場合

以下のような抗弁権がついた債権を、自働債権として相殺することはできません(大判昭13.3.1、最判昭32.2.22)。

③受働債権とする相殺が禁止される場合
  • 悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権(509条1号3
  • 人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権(509条2号
  • 差押禁止債権(510条
  • 支払の差止(差押)を受けた債権(511条1項4

相殺の方法

相殺は、当事者の一方が相手方に対して意思表示をすることで成立します。なお、相殺の意思表示には条件や期限を付けることはできません506条1項)。

相殺の効果

相殺が成立すると各債務者が、その対当額について債務を免れることになります(505条1項)。なお、効果は相殺適状時に遡って生じます(505条2項)。

  1. 参考:受働債権の期限の利益は放棄することができる(136条2項本文)ので、自働債権が弁済期であれば相殺可能。 ↩︎
  2. 具体例:相互に労務を提供する債務の場合や、相互に騒音を出さないという場合のように、現実の履行がないと意味がない場合は相殺できない。 ↩︎
  3. 重要判例:趣旨として、不法行為の被害者に現実の弁済による損害の補填をうけさせるとともに、不法行為の誘発を防止する点にあり、悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権は自働債権とする相殺は可能(最判昭42.11.30) ↩︎
  4. 参考:自働債権が差押後に取得され、かつ、差押後の原因に基づいて生じたものでなければ、両債権の弁済期の前後を問わず、相殺することができる(511条1項・2項↩︎
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