民法18-1:契約総論 – 契約の分類と成立契約の分類と成立をやさしく解説!双務契約・有償契約・諾成契約って何?

この記事はこんな人におすすめ

✅ 契約の種類(双務契約・片務契約・有償契約・無償契約など)を整理して覚えたい
✅ 「契約の成立」の流れ(申込・承諾)をしっかり理解したい
✅ 行政書士試験の民法対策として、条文に沿ったポイントを押さえたい

目次

契約総論|契約の分類と成立をやさしく解説

契約は民法の中心テーマのひとつです。ここでは、契約の分類成立要件について、わかりやすく整理していきます!

契約の分類

契約は、いろいろな観点から分類できます。まずは基本的な分類を押さえましょう。

双務契約と片務契約

契約当事者が互いに債務を負うか、それとも一方だけが債務を負うかで、次の2つに分かれます。「双務契約」は、互いに債務を負担する契約で、「片務契約」は一方しか債務を負担しない契約です。

当事者が互いに債務を負うか、それとも一方だけが債務を負うかで、次の2つに分かれます。

分類内容
双務契約当事者が互いに対価的な債務を負担する契約売買交換賃貸借請負有償委任有償寄託
片務契約当事者の一方だけが債務を負担する契約贈与消費貸借使用貸借無償委任無償寄託

ポイント!
双務契約には「同時履行の抗弁権533条)」や「危険負担536条)」が適用されますが、片務契約には適用されません。

有償契約と無償契約

契約当事者が対価の支払いをするかどうかで「有償契約」と「無償契約」に分類されます。

分類内容
有償契約双方が対価的な出費をする契約売買交換賃貸借請負有償委任有償寄託利息付消費貸借
無償契約対価的出費をしない契約贈与使用貸借無償委任無償寄託無利息消費貸借

ポイント!
有償契約には「売買の担保責任」など特別な規定が設けられています。一方、無償契約にはこうした規定は基本的にありません。

諾成契約と要物契約

契約の成立要件によって、「諾成契約」と「要物契約」に分類されます。

約の成立要件による分類もあります。

分類内容
諾成契約当事者の合意だけで成立する契約贈与売買交換書面でする消費貸借使用貸借賃貸借請負委任寄託
要物契約合意に加えて目的物の引渡しが必要な契約書面によらない消費貸借

代表的な契約一覧

それぞれの契約の概要も押さえておきましょう!

種類概要
贈与贈与者が、自分の財産を無償で受贈者に与えることを約束する契約
売買売主が「」(財産権)を買主に渡し、買主がその代金を支払う契約
交換当事者同士が「金銭の所有権以外の財産権」を互いに交換し合う契約
消費貸借借主が「同じ種類・品質・数量の物」を返す約束をして、貸主から金銭やその他の物を受け取る契約
使用貸借貸主」がある物を無償で貸し、「借主」がそれを使用・収益した後、契約終了時に返還することを約束する契約
賃貸借賃貸人が物を貸し、賃借人が賃料を支払うことを約束する契約
雇用労働を提供する人(被用者)と、その労働に対して報酬を支払う人(使用者)との間で結ばれる契約
請負「ある仕事を完成させること」を約束した請負人と、その成果に対して報酬を支払うことを約束した注文者との間で成立する契約
委任ある人(委任者)がv(例:示談交渉など)を他人(受任者)に頼み、その相手が「わかりました」と承諾することで成立する契約
寄託物を預けて保管してもらう契約

契約の成立

契約は「申込み」と「承諾」が合致したときに成立します(522条1項)。

申込と承諾

  • 申込みとは、契約の締結を求める意思表示です。
  • 承諾とは、その申込みに同意する意思表示をいいます。

注意!
承諾の際に条件をつけたり変更を加えた場合、それは申込みの拒絶新たな申込みとみなされます(528条1項)。

✅あわせてチェック
商法では、商行為の特則が定められています。👉商行為の特則(諾否の通知義務)

隔地者間の契約(離れた場所にいる者同士の契約)

隔地者間の契約とは、離れた場所にいる者同士が文章などで交渉して契約を成立させる場合を指します。このような契約では、申込みや承諾がその場で行われるわけではないので、その処理について民法に特別なルールが定められています。

①申込の撤回1

申込の撤回については、以下のように処理されます。

  • 申込が到達前の場合
    意思表示は、相手方に通知が到達した時点で効力を生じます(97条1項)。そのため、申込が到達する前であれば撤回可能2です。

  • 申込みが到達後の場合
    • 承諾期間を定めた契約の申込の場合
      撤回権を留保していない限り、撤回することはできません(523条1項)。

    • 承諾期間を定めない契約の申込の場合
      撤回権を留保していない限り、相手方が承諾通知を送るのに相当な期間は撤回できません(525条1項)。

申込者が申込に対して承諾期間内に承諾の通知を受けなかった場合、その申込は効力を失います(523条2項)。3

②意思能力喪失・行為能力制限

原則として、意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡したり、意思能力を喪失したり、行為能力の制限を受けりしても、その効力には影響を及ぼしません(97条3項)。

ただし、申込については以下の場合に、例外として効力を失います(526条)。

  • 申込者が、「その事実が生じた場合は申込を無効とする」旨の意思表示をしていた場合。
  • 申込の相手方が、承諾の通知を発する前に申込者の死亡・意思能力の喪失・行為能力の制限の事実を知っていた場合

✅あわせてチェック
商法では、商行為の特則が定められています。👉商行為の特則(隔地者間の契約の申込み

まとめ

契約にはさまざまな分類があり、それぞれ適用されるルールも違います。
また、契約は申込みと承諾が揃うことで成立しますが、隔地者間の場合は注意すべきルールがある点も押さえておきましょう。

  1. 撤回:意思表示をしたものが、その意思表示の効果を将来に向かって消滅させること ↩︎
  2. 重要判例:97条1項 ↩︎
  3. 参考:申込者は、遅延した承諾を新たな申込とみなすことができる(524条)から、これに対する承諾を行えば契約は成立する。 ↩︎
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