【条文】民法 第一編 総則(第1~174条)

令和7年6月1日 施行

目次

第一章 通則

(基本原則)

第1条

  • 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
  • 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
  • 権利の濫用は、これを許さない。

(解釈の基準)
第2条 
この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

第二章 人

第一節 権利能力

第3条 

  1. 私権の享有は、出生に始まる。
  2. 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

第二節 意思能力

第3条の2

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

第三節 行為能力


(成年)
第4条
年齢18歳をもって、成年とする。

(未成年者の法律行為)
第5条

  1. 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
  2. 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
  3. 項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

(未成年者の営業の許可)
第6条

  • 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
  • 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

(後見開始の審判)
第7条 
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

(成年被後見人及び成年後見人)
第8条 
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

(成年被後見人の法律行為)
第9条 
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

(後見開始の審判の取消し)
第10条 
第8条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

(保佐開始の審判)
第11条 
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。

(被保佐人及び保佐人)
第12条 
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

(保佐人の同意を要する行為等)
第13条

  • 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
    • 一 元本を領収し、又は利用すること。
    • 二 借財又は保証をすること。
    • 三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
    • 四 訴訟行為をすること。
    • 五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
    • 六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
    • 七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
    • 八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
    • 九 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
    • 十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

  • 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

  • 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

  • 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

(保佐開始の審判等の取消し)
第14条

  1. 第11条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。
  2. 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

(補助開始の審判)
第15条

  • 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
  • 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  • 補助開始の審判は、第17条項の審判又は第876条の9項の審判とともにしなければならない。

(被補助人及び補助人
第16条 
補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第17条

  1. 家庭裁判所は、第15条項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。
    ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条項に規定する行為の一部に限る。
  2. 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  3. 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
  4. 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

(補助開始の審判等の取消し)
第18条

  1. 第15条項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
  2. 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
  3. 前条項の審判及び第876条の9項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

(審判相互の関係)

第19条

  • 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
  • 前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。

(制限行為能力者の相手方の催告権)
第20条

  • 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

  • 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

  • 特別の方式を要する行為については、前項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

  • 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条項の審判を受けた被補助人に対しては、第項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

(制限行為能力者の詐術)
第21条 
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

第四節 住所

(住所)
第22条 
各人の生活の本拠をその者の住所とする。

(居所)
第23条 

  • 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
  • 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。

(仮住所)
第24条 
ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

第五節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告

(不在者の財産の管理)
第25条

  • 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
  • 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

(管理人の改任)
第26条 
不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

(管理人の職務)
第27条

  • 前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
  • 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
  • 項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

(管理人の権限)
第28条 
管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

(管理人の担保提供及び報酬)
第29条

  • 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
  • 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

(失踪の宣告)
第30条

  • 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪そうの宣告をすることができる。
  • 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

(失踪の宣告の効力)
第31条 
前条項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

(失踪の宣告の取消し)
第32条

  • 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
  • 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

第六節 同時死亡の推定

第32条の2 
数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

第三章 法人

(法人の成立等)
第33条

  1. 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
  2. 学術、技芸、慈善、祭祀し、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。

(法人の能力)
第34条 
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

(外国法人)
第35条

  • 外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。
  • 前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。

(登記)
第36条 
法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記をするものとする。

(外国法人の登記)
第37条

  • 外国法人(第35条項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。
    • 一 外国法人の設立の準拠法
    • 二 目的
    • 三 名称
    • 四 事務所の所在場所
    • 五 存続期間を定めたときは、その定め
    • 六 代表者の氏名及び住所

  • 前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、3週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。
  • 代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
  • 項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。
  • 外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。
  • 外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては3週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
  • 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。
  • 外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、50万円以下の過料に処する。

第38条から第84条まで 削除

第四章 物

(定義)
第85条 
この法律において「物」とは、有体物をいう。

(不動産及び動産)
第86条

  • 土地及びその定着物は、不動産とする。
  • 不動産以外の物は、すべて動産とする。

(主物及び従物
第87条

  • 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
  • 従物は、主物の処分に従う。

(天然果実及び法定果実
第88条

  • 物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
  • 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

(果実の帰属)
第89条

  • 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
  • 法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

第五章 法律行為

第一節 総則

(公序良俗)
第90条 
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

(任意規定と異なる意思表示)
第91条 
法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

(任意規定と異なる慣習)
第92条
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

第二節 意思表示

(心裡留保)
第93条

  1. 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
  2. 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

(虚偽表示)
第94条

  • 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
  • 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

(錯誤)
第95条

  1. 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
    • 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
    • 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

  2. 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
  3. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
    • 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
    • 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
  4. 項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(詐欺又は強迫)
第96条

  • 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
  • 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
  • 項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(意思表示の効力発生時期等)
第97条

  1. 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
  2. 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
  3. 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

(公示による意思表示)
第98条

  • 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
  • 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成8年法律第109号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。
    ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
  • 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
  • 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
  • 裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

(意思表示の受領能力)
第98条の2

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。
ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。

  • 一 相手方の法定代理人
  • 二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方

第三節 代理

(代理行為の要件及び効果)
第99条

  1. 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
  2. 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

(本人のためにすることを示さない意思表示)
第100条 
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条項の規定を準用する。

(代理行為の瑕疵)
第101条

  1. 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
  2. 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
  3. 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

(代理人の行為能力)
第102条 
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

(権限の定めのない代理人の権限)
第103条 
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(任意代理人による復代理人の選任)
第104条 
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

(法定代理人による復代理人の選任)
第105条 
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

(復代理人の権限等)
第106条

  • 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
  • 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

(代理権の濫用)
第107条 
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

(自己契約及び双方代理等)
第108条

  • 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
  • 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

(代理権授与の表示による表見代理等)
第109条

  1. 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。
    ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

  2. 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

(権限外の行為の表見代理)
第110条 
前条項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

(代理権の消滅事由)
第111条

  1. 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
    • 一 本人の死亡
    • 二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
  2. 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。

(代理権消滅後の表見代理等)
第112条

  • 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

  • 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

(無権代理)
第113条

  • 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
  • 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

(無権代理の相手方の催告権)
第114条
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

(無権代理の相手方の取消権)
第115条
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。
ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

(無権代理行為の追認)
第116条 
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。

(無権代理人の責任)
第117条

  • 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

  • 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
    • 一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
    • 二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。
      ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
    • 三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

(単独行為の無権代理)
第118条 
単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第113条から前条までの規定を準用する。
代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。

第四節 無効及び取消し

(無効な行為の追認)
第119条 
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。
ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

(取消権者)
第120条

  1. 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
  2. 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵かしある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

(取消しの効果)
第121条 
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

(原状回復の義務)
第121条の2

  1. 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
  2. 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
  3. 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

(取り消すことができる行為の追認)
第122条 
取り消すことができる行為は、第120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。

(取消し及び追認の方法)
第123条 
取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。

(追認の要件)
第124条

  • 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
  • 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
    • 一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
    • 二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。

(法定追認)
第125条
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

  • 一 全部又は一部の履行
  • 二 履行の請求
  • 三 更改
  • 四 担保の供与
  • 五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
  • 六 強制執行

(取消権の期間の制限)
第126条 
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

第五節 条件及び期限

(条件が成就した場合の効果)
第127条

  • 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
  • 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
  • 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
第128条 
条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

(条件の成否未定の間における権利の処分等)
第129条 
条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

(条件の成就の妨害等)
第130条

  • 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
  • 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

(既成条件)
第131条

  • 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
  • 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
  • 項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定を準用する。

(不法条件)
第132条 
不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

(不能条件)
第133条

  • 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
  • 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。

(随意条件)
第134条 
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

(期限の到来の効果)
第135条

  • 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
  • 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

(期限の利益及びその放棄)
第136条

  • 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
  • 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

(期限の利益の喪失)
第137条 
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。

  • 一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
  • 二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
  • 三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

第六章 期間の計算

(期間の計算の通則)
第138条 
期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。

(期間の起算)
第139条 
時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

第140条 
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。
ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

(期間の満了)
第141条 
前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

第142条 
期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

(暦による期間の計算)
第143条 
週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。
ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

第七章 時効

第一節 総則

(時効の効力)
第144条 
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

(時効の援用)
第145条 
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

(時効の利益の放棄)
第146条
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第147条

  • 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
    • 一 裁判上の請求
    • 二 支払督促
    • 三 民事訴訟法第275条第1項の和解又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事事件手続法(平成23年法律第52号)による調停
    • 四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

  • 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第148条

  • 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
    • 一 強制執行
    • 二 担保権の実行
    • 三 民事執行法(昭和54年法律第4号)第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
    • 四 民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続
  • 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
    ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

(仮差押え等による時効の完成猶予)
第149条 
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

  • 一 仮差押え
  • 二 仮処分

(催告による時効の完成猶予)
第150条

  1. 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
  2. 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151条

  1. 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
    • 一 その合意があった時から1年を経過した時
    • 二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
    • 三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時

  2. 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。
    ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。

  3. 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。

  4. 項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

  5. 前項の規定は、第項第三号の通知について準用する。

(承認による時効の更新)
第152条

  1. 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
  2. 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)
第153条

  • 第147条又は第148条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
  • 第149条から第151条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
  • 前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

第154条 
第148条項各号又は第149条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第148条又は第149条の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。

第155条から第157条まで 削除

(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
第158条

  1. 時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。

  2. 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
第159条 
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(相続財産に関する時効の完成猶予)
第160条 
相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(天災等による時効の完成猶予)
第161条 
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第147条項各号又は第148条項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

第二節 取得時効

(所有権の取得時効)
第162条

  • 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
  • 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。 

(所有権以外の財産権の取得時効)
第163条 
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。

(占有の中止等による取得時効の中断)
第164条 
第162条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。

第165条 
前条の規定は、第163条の場合について準用する。

第三節 消滅時効

(債権等の消滅時効)
第166条

  1. 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
    • 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
    • 二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

  2. 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

  3. 項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。
    ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。


(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第167条 
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条項第二号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

(定期金債権の消滅時効)
第168条

  1. 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
    • 一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
    • 二 前号に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。

  2. 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

(判決で確定した権利の消滅時効)
第169条

  1. 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。
  2. 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

第170条から第174条まで 削除

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