民法18-1:契約総論 – 契約の分類と成立

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契約の分類

双務契約と片務契約

契約は、債務をどちらが負担するかによって「双務契約」と「片務契約」に分類されます。
双務契約は、互いに債務を負担する契約で、片務契約は一方しか債務を負担しない契約です。

双務契約片務契約
意味契約当事者が互いに対価的債務を負担する契約契約当事者が互いに対価的債務を負担しない契約
該当する契約売買交換賃貸借・請負・有償委任・有償寄託贈与消費貸借使用貸借・無償委任・無償寄託

なお、双務契約には同時履行の抗弁権533条)や危険負担536条)の規定が適用されますが、片務契約にはこれらの規定は適用されません。

有償契約と無償契約

契約は、当事者が対価的な出費をするかどうかによって、「有償契約」と「無償契約」に分類されます。

有償契約無償契約
意味契約当事者が互いに対価的出費をする契約契約当事者が互いに対価的出費をしない契約
該当する契約売買交換賃貸借・請負・有償委任・有償寄託・利息付消費貸借贈与使用貸借・無償委任・無償寄託・無利息消費貸借

有償契約には売買の担保責任などの規定が適用されますが、無償契約にはこれらの規定の適用はありません。

諾成契約と要物契約

契約の成立要件によって、「諾成契約」と「要物契約」に分類されます。

諾成契約要物契約
意味契約当事者の合意のみで成立する契約契約当事者の合意のほかに目的物の引渡しをすることが成立要件である契約
該当する契約贈与売買交換書面でする消費貸借使用貸借賃貸借・請負・委任・寄託書面によらない消費貸借

分類まとめ

契約双務片務有償無償諾成要物
贈与
売買
交換
消費貸借△(書面有)△(書面無)
使用貸借
賃貸借
雇用
請負
委任
寄託△(有償)△(無償)△(有償)△(無償)
組合
終身定期金
和解

契約の成立

申込と承諾

契約は、申込み承諾が合致することで成立します(522条1項)。

なお、承諾者が申込に条件を付したり、その他の変更を加えて承諾したときは、それは元の申込みの拒絶とともに、新たな申込をしたものとみなされます(528条1項)。

隔地者間の契約

隔地者間の契約とは、離れた場所にいる者同士が文章などで交渉して契約を成立させる場合を指します。このような契約では、申込みや承諾がその場で行われるわけではないので、その処理について民法に様々な規定が設けられています。

①申込の撤回1

申込の撤回については、以下のように処理されます。

  • 申込が到達前の場合
    意思表示は、相手方に通知が到達した時点で効力を生じます(97条1項)。そのため、申込が到達する前であれば撤回可能2です。

  • 申込みが到達後の場合
    • 承諾期間を定めた契約の申込の場合
      撤回権を留保していない限り、撤回することはできません(523条1項)。

    • 承諾期間を定めない契約の申込の場合
      撤回権を留保していない限り、相手方が承諾通知を送るのに相当な期間は撤回できません(525条1項)。

申込者が申込に対して承諾期間内に承諾の通知を受けなかった場合、その申込は効力を失います(523条2項)。3

②意思能力喪失・行為能力制限

原則として、意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡したり、意思能力を喪失したり、行為能力の制限を受けりしても、その効力には影響を及ぼしません(97条3項)。

ただし、申込については以下の場合に、例外として効力を失います(526条)。

  • 申込者が、「その事実が生じた場合は申込を無効とする」旨の意思表示をしていた場合。
  • 申込の相手方が、承諾の通知を発する前に申込者の死亡・意思能力の喪失・行為能力の制限の事実を知っていた場合
  1. 撤回:意思表示をしたものが、その意思表示の効果を将来に向かって消滅させること ↩︎
  2. 重要判例:97条1項 ↩︎
  3. 参考:申込者は、遅延した承諾を新たな申込とみなすことができる(524条)から、これに対する承諾を行えば契約は成立する。 ↩︎
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